2012年11月19日

作業経過

皆さんこんにちは。
今回は10月から作業がスタートした作品の途中経過をご報告します。

■ 土曜日Bチーム「花火」
まず画面の汚れをクリーニングしました。弱っている絵具層に負担をかけないように柔らかい刷毛で画面を湿らせて汚れを浮かせ、紙に吸い取らせました。次に絵具層を保護するために合成樹脂の接着剤(plexisol)で薄い和紙を画面に貼り付けました(表打ち)。油分が少なく粉状になった絵具層に接着剤のplexisolが染み込んで絵具層を強化してくれるのではないかという狙いもありました。ところがplexisolが乾くと和紙が絵具層から浮いてしまいました。通常使う和紙よりも分厚くて堅いものを使ったことが原因かもしれません。結局、膠を使って表打ちを行いました。その後、木枠から作品を外しクラフト紙で仮の木枠に固定し、裏面のクリーニングを行いました。裏面の汚れが著しかったためアンモニアをジェル状にしたものを用いました。次に絵具層の接着を強化するために合成樹脂の接着剤(beva371)を裏面から染み込ませました。
DSCN6890.JPG

■日曜日Aチーム「春照のニコライ堂」
まずは絵の保存状態をチェックして、溶剤テストを行いました。
その結果を見て修復方法を決定。
絵具層に多少のヒビや剥離が見られたので、ウサギ膠を使って剥離止めをしました。膠を入れてから軽く熱を与え、重しを置いて放置することで絵具層が固着します。
剥離止めが終わると水でのクリーニングに入ります。湿らせたコットンで擦るとかなり汚れが取れました。その後続けて0.5%のアンモニア水でもクリーニングを行いました。
DSCN7014.JPG

■日曜日Bチーム「横向きの裸婦」
画面全体にカビが繁殖していたので、画面全体を水で湿らせたコットンでクリーニングした後、5%のエタノール水でも同じ方法でクリーニングしました。
終わったら木枠からキャンバスを外して、端に溜まったほこりを掃除機で吸い取りました。
折れ曲がったみみを伸ばした後大きな板にホッチキスでキャンバスを張り付けます。
そして表打ち。絵の表側にウサギ膠で和紙を張り付けることで、作業中に絵具が剥離したり傷つく事を防止しました。
表打ちが終わると、キャンバスを平らにしてから裏面の汚れを取ります。裏面が綺麗になったらウサギ膠をキャンバスに浸透させてアイロンがけをし、絵具層とキャンバス全体をしっかり固着しました。
DSCN6972.JPG

■日曜日Cチーム「裸婦」
かなり剥離が激しかったのでニコライ堂と同様にウサギ膠で剥離止めをしました。またボンドの様なものが剥離部分にかかっていた為キシレンという溶剤で除去しました。絵具層がかなりもろく、接着剤を除去する際に一緒に取れてしまうことが度々ありました。
接着剤を除去した後は、水とコットンで画面をクリーニングしました。こちらの絵も見た目よりかなり汚れていました。
DSCN6921.JPG
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DSCN6922.JPG

それぞれの作品に難しい作業や根気のいる作業があると思いますが、がんばって続けていきましょう。
posted by スタッフA at 14:56| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2012年11月11日

新しい作品の修復が始まりました

皆さんこんにちは。すっかり寒くなってきましたが風邪などひかれていませんか。
さて教室では10月から新しい作品の修復が始まりました。今回は新しく修復する作品をご紹介します。

■土曜日Bチーム「花火」(約23×16(cm)、制作年不詳)
この作品は絵具層に油分が少なくかさかさとした状態で接着が弱くなっています。絵具層がかなり弱く水で色落ちしてしまうため、合成樹脂の接着剤(plexisol)で表打ちと絵具層の接着強化を行うことにしました。キャンバスは比較的良好な状態で強度がありそうなので、裏打ちは行いません。striplining(キャンバスの耳部分を補強し、幅を延長する)という方法で修復を行う予定です。
花火.jpg

■日曜日Aチーム「春照のニコライ堂」(約65×53(cm)、1970年)
絵具が厚塗りされ画面に凹凸があるのがこの作品の特徴です。画面全体に埃汚れが堆積しています。また絵具層の接着が弱く、所々に絵具の剥落が生じています。厚塗りされた絵具の質感を損ねることなく、絵具層の接着を強化できるかがポイントになります。合成樹脂の接着剤(plexisol)を用い、減圧方式で絵具層接着強化を行う予定です。キャンバスの状態は良好であり、裏面にサイン等の書き込みがあるため全面的な裏打ちは行いません。土曜日Bチームと同様にstripliningを行います。
春照のニコライ堂.jpg

■日曜日Bチーム「横向きの裸婦」(約53×46 ( cm)、制作年不詳)
この作品は全体にカビの跡があります。その他の状態は比較的良好でキャンバスも裏打ちを必要とする程は傷んでいません。カビの除去、殺菌を行い、絵具層の裏面から接着剤を染み込ませて絵具層の接着強化を行います。このチームは膠を用いた絵具層の接着強化を行ったことがないので、今回は膠で接着強化を行う予定です。この作品には裏打ちはせずstripliningを行います。
横向きの裸婦.jpg

■日曜日Cチーム「裸婦」(約73×61(cm)、制作年不詳)
この作品は、絵具層の剥落が著しく、過去に接着剤で絵具層を接着しようとした痕跡があります。黄変した接着剤が画面のいたる所に付着し鑑賞の防げになっています。過去に使われた接着剤を上手く除去して、修復に適した接着剤を用いて絵具層を剥落止めしていきます。またキャンバスも劣化しており裏打ちをする必要があります。裏打ちにはイタリアの伝統的な接着剤(pasta)を用います。絵具層の接着強化には合成樹脂系接着剤(plexisol)を用いる予定です。
裸婦.jpg


作品によって症状は様々で、用いる修復方法も作品ごとに変わってきます。せっかくの機会なので他のチームの進行状況も時々のぞいてみてください。

posted by スタッフA at 18:22| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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