2012年11月11日

新しい作品の修復が始まりました

皆さんこんにちは。すっかり寒くなってきましたが風邪などひかれていませんか。
さて教室では10月から新しい作品の修復が始まりました。今回は新しく修復する作品をご紹介します。

■土曜日Bチーム「花火」(約23×16(cm)、制作年不詳)
この作品は絵具層に油分が少なくかさかさとした状態で接着が弱くなっています。絵具層がかなり弱く水で色落ちしてしまうため、合成樹脂の接着剤(plexisol)で表打ちと絵具層の接着強化を行うことにしました。キャンバスは比較的良好な状態で強度がありそうなので、裏打ちは行いません。striplining(キャンバスの耳部分を補強し、幅を延長する)という方法で修復を行う予定です。
花火.jpg

■日曜日Aチーム「春照のニコライ堂」(約65×53(cm)、1970年)
絵具が厚塗りされ画面に凹凸があるのがこの作品の特徴です。画面全体に埃汚れが堆積しています。また絵具層の接着が弱く、所々に絵具の剥落が生じています。厚塗りされた絵具の質感を損ねることなく、絵具層の接着を強化できるかがポイントになります。合成樹脂の接着剤(plexisol)を用い、減圧方式で絵具層接着強化を行う予定です。キャンバスの状態は良好であり、裏面にサイン等の書き込みがあるため全面的な裏打ちは行いません。土曜日Bチームと同様にstripliningを行います。
春照のニコライ堂.jpg

■日曜日Bチーム「横向きの裸婦」(約53×46 ( cm)、制作年不詳)
この作品は全体にカビの跡があります。その他の状態は比較的良好でキャンバスも裏打ちを必要とする程は傷んでいません。カビの除去、殺菌を行い、絵具層の裏面から接着剤を染み込ませて絵具層の接着強化を行います。このチームは膠を用いた絵具層の接着強化を行ったことがないので、今回は膠で接着強化を行う予定です。この作品には裏打ちはせずstripliningを行います。
横向きの裸婦.jpg

■日曜日Cチーム「裸婦」(約73×61(cm)、制作年不詳)
この作品は、絵具層の剥落が著しく、過去に接着剤で絵具層を接着しようとした痕跡があります。黄変した接着剤が画面のいたる所に付着し鑑賞の防げになっています。過去に使われた接着剤を上手く除去して、修復に適した接着剤を用いて絵具層を剥落止めしていきます。またキャンバスも劣化しており裏打ちをする必要があります。裏打ちにはイタリアの伝統的な接着剤(pasta)を用います。絵具層の接着強化には合成樹脂系接着剤(plexisol)を用いる予定です。
裸婦.jpg


作品によって症状は様々で、用いる修復方法も作品ごとに変わってきます。せっかくの機会なので他のチームの進行状況も時々のぞいてみてください。

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2012年10月29日

これまでの作業のまとめ

みなさん、こんにちは。
近頃は、朝晩が涼しくなり、ようやく秋の気配がしてきましたね。

長らく更新していなくてすみません。

日曜クラスの生徒さんは、これまでの作品の保存修復作業は終了し、10月から新しい作品に入りました。
今回は、いままでの作品の総まとめをします。
次回は、新しい作品についての方針を皆さんに展開します。
(土曜日クラスは現在進行中です。)

■土曜日クラスのCグループ
題材「波と岩」(仮題)
裏打ち布の準備をしました。新しいキャンバスは、水分を含むと動きやすくなるため、予め痛めつけておく必要があります。パスタで裏打ちをする場合は、特に、痛めつけておく必要があります。
続いて、作品の裏面掃除をしました。かなり汚れていましたが、きれいになりました。
次に、裏打ち布に、膠を塗布しました。塗布後、少し弛んでしまいました。膠を均一に塗布していないためと考えられますが、後日確認したところ、乾いた状態は問題ありませんでした。均一に塗布するのは難しいですね。
作品の裏側から、膠を染み込ませ、表側からアイロンを充てました。その際、変形修正を逆に張ってしまったため、高さを合わせるために、板で調整しました。アイロンは60℃を超えないよう充分注意し、作業しました。熱を加え、蒸気を逃がすことで、固着が強化されます。
翌週は、パスタ(小麦粉で出来た接着剤)で裏打ちを行いました。裏打ち布と作品にそれぞれパスタを塗布し、空気が入らないように注意しながら貼り合わせた後、アイロンを充てて作品と裏打ち布の接着を行いました。ポイントは、新聞紙を取り替える時間です。始めはすぐに取り替えますが、だんだん間隔を空けていき、接着剤を充分乾かして行きます。
現在は、表打ちの除去をぬるま湯で行っているところです。絵具の固着強化は上手くいっているようです。

DSCN6847.JPG

■日曜クラスのAグループ
題材「川辺の風景」(仮題)
裏打ちは、plexitolで行ないました。
まず、絵具層を固着強化するために、作品の裏から、plexisolを塗布し、乾燥させた後、裏打ちをするためにplexitolを裏打ち用キャンバスと作品裏面にそれぞれ塗布しました。次に空気が入らないように作品と裏打ち用キャンバスを貼り合わせ、表から60℃くらいにしたアイロンを充て、重しを乗せて裏打ちをしました。
後日確認をしたところ、キャンバスの裏からplexitolが、表面がツルツルとした状態で滲み出していました。恐らく、plexitolを塗布した量が多かったためと、アイロンを充てたことで樹脂が緩み、滲み出しやすくなってしまったと考えられます。その為、滲み出したplexitolをビストリで削り落としました。
続いて表打ちを剥がしました。その際、一部の箇所で、表打ちの和紙に細かい絵具がくっついてしまい、和紙とともに取れてしまいました。原因として、いくつか考えられます。一つ目は、表打ちが強すぎた。絵具層とキャンバスの接着が弱い作品であったため、通常の濃さの生麩糊を用いて表打ちをすると、和紙と絵具の接着の方が、絵具とキャンバスの接着よりも強くなり、絵具をキャンバスから浮かしてしまった可能性があります。和紙に絵具がくっついている状態で絵具層の固着強化を行っても、絵具とキャンバスが付きにくくなっていたために上手く接着出来なかったと考えられます。二つ目は、表打ちの接着性が増した。表打ちに生麩糊、裏打ちにplexitolを使用したので、それらが水に溶ける性質を持った材料なので、表打ちを剥がす際に使用したお湯(通常お湯で剥がします)によって少し溶け出し、接着性が増してしまったのではと考えています。三つ目として、アイロンを表から充てたために、固着強化用の合成樹脂が充分に絵具層に留まらなかった可能性も考えられます。(合成樹脂を塗布した場合、裏面から暖めます)そのため、絵具層が少し脆い印象がありました。(つまり絵画層の固着が上手くいっていない可能性がある)
長くなりましたが、上記のような原因が挙げられます。
まだ作品に汚れが残っていたため、アセトンを固めの刷毛で塗布し、軽く擦ってキッチンペーパーで拭き取りながら、大凸部分に溜まった汚れをクリーニングしました。
その後、ルースライニングをして、作品を木枠に張り戻しました。
これにて、保存修復作業は終了しました。

DSCN6576.JPG

DSCN6729.JPG

■日曜クラスのBグループ
題材「田舎の道」(仮題)
減圧で行なった絵画層の固着及び裏打ちは上手くいっていました。
順調に表打ちを剥がした後、和紙の繊維が残っているところをクリーニングしていきました。表打ちの和紙を取る際に、同時に汚れも取れていましたが、まだ少し黒ずんだ汚れが残っていたため、溶剤を使用してクリーニングをしました。
最後に、作品を木枠に張り戻して、保存修復作業が終了しました。

DSCN6567.JPG

■日曜クラスのCグループ
題材「白い花瓶の花」(仮題)
絵画層の固着強化および裏打ちを減圧で同時に行いました。
その後、表打ちを剥がしました。特に問題が生じなかったため、減圧作業は上手くいきました。表打ちはplexisolで行ったため、ミネスピで除去しました。
最後に、作品を木枠に張り戻して、保存修復作業が終了しました。

DSCN6658.JPG

■日曜クラスのDグループ
題材「ぶどうの静物」
減圧で行なった絵画層の固着ですが、あまり上手くいっていませんでした。原因は、裏から合成樹脂(beva)を染み込ませた際、あまり表まで行き渡っていなかったためです。表まで行き渡らないと、絵画層と支持体(キャンバス)の間に接着剤が染み込んでいないと考えられます。
また、減圧をした際、裏に書かれている文字に厚みがあったため、表に跡がついてしましました。裏から文字の厚みをビストリで削り、少し水を含ませて、表からアイロンを充て、平坦化しました。
続いて細かい亀裂を直すため、亀裂部分に合成樹脂(beva)を塗布し、コテを充てて剥離止めを行ないました。
次に、作品の耳の部分を強化するために、ストリップライニングを施し、作品を木枠に張り戻しました。
張り戻した後、亀裂がまだ気になったため、部分的に剥離止めを行いました。
これにて、保存修復作業が終了しました。


各チームの皆さん、お疲れ様でした。
それぞれ、上手くいった点、いかなかった点がまとめられ、一歩でもステップアップ出来たら幸いです。
posted by スタッフA at 16:17| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2012年08月20日

これまでの作業経過について

皆さんこんにちは。
まだまだ暑い日が続きますが、夏バテなどしていませんか?
冷たい飲み物が手放せない日が続きますが、体調には気を配ってくださいね。

長らく情報提供せず、すみません。
これまでの作業経過について、展開したいと思います。

■土曜日クラスのAグループ
題材「風景(山)」(仮題)
Aグループも保存修復がスタートしました。
生徒さんの要望もあって、裏打ちを生麩のりで行います。
教室として、初めての試みです。
状態調査、溶剤テスト後、表打ちを生麩のりで行い、作品を木枠から外し、画面の平滑化を行ないました。
その後、作品の裏に膠を塗り、アイロンで染み込ませました。
現在は、生麩のりで裏打ちする前準備として、裏打ち用のキャンバスに生麩のりを付けた和紙を乗せ、板に張り付けて固定させています。作品にも同様に生麩のりを付けた和紙を乗せ、板に張り付けて固定させています。
ここでのポイントとして、布は水分を含ませ、乾燥させると緩み、紙は水分を含ませ、乾燥させると縮むという性質を持っています。キャンバスと和紙にあらかじめ霧吹きで水を軽く含ませることによって、お互いが伸びた状態を作り、しっかりと固定させることによって、動きを固定させています。
DSCN6188.JPG

■土曜日クラスのCグループ
題材「波と岩」(仮題)
状態調査、溶剤テストの結果、予定通り、裏打ちを伝統的な技法であるパスタで行ないます。
水でクリーニング後、作品を木枠から外し、表打ちを膠で行いました。
現在は画面の平滑化を行なっているところです。
ここでのポイントとして、合成樹脂で裏打ちする場合、作品を上に向けて画面の平滑化を行いますが、
パスタで裏打ちをする場合は、作品を下に向けて行ないます。(作業の便宜上)
今回、作品を上に向けて行なってしまったので、裏打ちをする際、少し注意が必要です。
DSCN6149.JPG

■日曜クラスのAグループ
題材「川辺の風景」(仮題)
合成樹脂で絵画層を固着させ、パスタで裏打ちを行なう予定でしたが、状態調査、溶剤テストの結果、パスタでの裏打ちが困難と判断し、合成樹脂での裏打ちとなりました。
しかし、教室で今まで行なってきた合成樹脂の方法と異なり、今回は、plexisolで絵画層を固着し、plexitolで裏打ちを行なう方法を勉強します。
イタリアでも行なわれている方法です。こちらも、教室では初めての試みです。
絵具が大変脆くなっていたため、先に生麩のりで表打ちし、作品を木枠から外した後、裂けた部分の変形修正、パッチ当てをしました。表打ちで画面を固定させていた為、裂けた部分の変形修正は少しの効果があったものの、それ以上の効果は望めず、intarsioを施しました。
その後、画面の変形修正を行い、作品にplexisolを含浸させ、ポリエステルの布で裏打ち布の準備をしました。
減圧で絵画層の固着を行い、現在は裏打ちをしている状態です。
次回、裏打ちが上手くいっているか確認しましょう。
ここでのポイントは、plexisolとplexitolが希釈しているものが異なるが同じ成分の合成樹脂であること、ポリエステル布を裏打ち布に使用することで、水分を含ませても布が動かないこと(plexitolは水で希釈)です。
DSCN5964.JPG
DSCN6546.JPG

■日曜クラスのBグループ
題材「田舎の道」(仮題)
状態調査、溶剤テストの結果、予定通り、絵画層の固着・裏打ちを合成樹脂で行ないます。
ワニスを除去し、作品を木枠から外し、生麩のりで表打ちを行ないました。その後、裏打ち用のキャンバスを準備し、画面の平滑化を行いました。かなり画面が歪んでいたため、一度の平滑化だけでは足りず、霧吹きで作品を湿らせ、アイロンを充てることで画面が平らになりました。
裏打ちに使用するbevafilmを用意し、合成樹脂(beva)を作品に染み込ませました。
現在は、減圧によって、絵画層の固着・裏打ちを一度に行なった状態です。
DSCN6487.JPG

■日曜クラスのCグループ
題材「白い花瓶の花」(仮題)
伝統的な裏打ち方法であるパスタで行なう予定でしたが、状態調査、溶剤テストの結果、パスタでの裏打ちには適さないと判断し、合成樹脂での裏打ちを行なうことになりました。
絵具が脆いため、先に膠で剥離止めを行った後、水にも弱い作品のため、スポンジでドライクリーニングをしました。
作品を木枠から外し、表打ちは合成樹脂(plexisol)で行い、画面を平滑化させ、作品の裏から合成樹脂(plexisol)を染み込ませました。
現在は、裏打ち用のキャンバスを準備したところです。
DSCN6108.JPG

■日曜クラスのDグループ
題材「ぶどうの静物」
状態調査、溶剤テストの結果、予定通り、合成樹脂で絵画層の固着を行い、作品の耳の補強について勉強します。
水でクリーニングを行い、作品を木枠から外し、生麩のりで表打ちをしました。
その後、画面を平滑化し、作品の裏から合成樹脂(beva)を染み込ませました。
現在は、「田舎の道」と同時に減圧により、絵画層の固着をした状態です。


それぞれ、作品によって様々な症状が出ますので、注意して作業していきたいですね。
それでは、今週末もがんばっていきましょう!
posted by スタッフA at 16:17| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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